クラゲ水槽の導入実績


珈琲屋凡豆のマスター柳生小五郎さん。
「だんだん日が暮れていく中で眺めるクラゲは、ほんま美しいで!」と語ってくださいました。

奈良公園の一角にある住宅街にひっそりと佇む珈琲豆の専門店「凡豆(ぼんず)」。
通りに面したガラス窓越しにフワフワと漂うクラゲの水槽が置かれている。
「観光客の皆さんが足を止めて水槽に見入っていかれますわ。」
そう語ってくださったのは店主の柳生小五郎さん。
御年87歳で、もう60年近くもこの店を切り盛りされている。一日に数種類の豆を何度も焙煎し常に新鮮な状態で提供される珈琲豆は昔からのファンも多く、平日だというのにお客さんがひっきりなしに訪れていた。
アンティークな絵画やオブジェが飾られた異国情調漂う店内で、珈琲の香りに包まれながらお話をうかがった。

奈良市高畑町の住宅街にある柳生さんのお店。
通りを行く観光客がふと足を止めて水槽を覗いていく姿も。

元々は神戸ご出身の柳生さん。15歳で予科練(戦時中の航空兵養成制度)に志願し零戦にも乗られた経験を持つ。訓練飛行は常に死と隣り合わせだが、命を落とすことよりもうっかり操縦ミスをしたときに教官たちから受ける罰(「軍人精神注入棒」と名付けられた教官手作りの木製バットでお尻を思い切り叩かれる!)の方がよっぽど恐ろしかった、と当時を振り返る。

終戦後、柳生さんは焼け野原となった故郷を去り親戚を頼って奈良へと移り住んだ。当時、現在の奈良教育大学から市立奈良病院のあたりに進駐軍のキャンプがあり、そこの食堂での皿洗いが奈良での最初の仕事だったそうだ。キッチンポリス(炊事兵)が“Clean up!!”と怒鳴りながら次々に投げてくる汚れたフライパンや皿を “イエッサー、イエッサー”と言いながら洗い続ける過酷な仕事場。しかしそんな中でも日本人の根性はたくましく、その日その日を生き抜いて来られたのだという。

カウンター横に置かれたシルクハット姿のだるま。
店内にさりげなく飾られたオブジェにも独特のセンスが光る。

その後ほどなくして現在の場所に珈琲豆の専門店をオープン。
開店当初の店名は「BOON’S(ぼんず)」。
珈琲の起源とされるエチオピアの灌木「バン(BOON)」に由来している。
その後現在の店名である「凡豆(ぼんず)」という風に漢字を当てた。
「ほんまに良い当て字を付けたと思いますわ。平凡な豆しか売りませんから、そない美味しくなくてもお客さんは文句言えませんからなあ!」と豪快に笑う柳生さん。
「でもな、嘘はついたらあかん。
守るべきところはきっちり守って、これまでやってきましたんや。」

琥珀色の愛犬、凡次郎を膝に乗せてお話をされる柳生さん。

取材中、ふと店の前を小さな黄色い帽子が行ったり来たりしているのが見えた。
聞けば店の前は近所の小学校の通学路でもあり、登下校中の子どもたちが不思議そうにクラゲの水槽に見入る姿が日常だという。

「“このクラゲ生きてるの?”という質問には答えんようにしてます。」
柳生さんはきっぱりと言った。
「子どもは正直なもんで、大人が“これは作り物だよ”と教えた途端に“なぁんだ”と言って
もう見向きもしなくなる。
“本物かどうかじっくり見て自分で考えてごらん”と言えば、
いつまでも興味を持って見続けるんです。
私自身、長年このクラゲを見続けていますが、なんぼ見ても飽きん。特に、夕方だんだん暗くなっていく中で見るクラゲは特別キレイでほんまに見とれます。」

大切なのは自分がどう感じるか、何を信じるか。
ご馳走になった珈琲は柳生さんの人生がぎゅっと凝縮されたような深くて濃い味がした。

〈想芸館 奥田エイメイより〉

凡豆の柳生さん(左)と想芸館の奥田エイメイ(右)。

凡豆の柳生さんは、想芸館のクラゲ水槽の一番最初のお客様です。
十数年前、実はまだ試作品で、きちんと値段もつけていなかった私の水中オブジェを「これはいいものやね」と励ましていただき、買っていただいたことから自信を得て、人工クラゲ水槽の仕事が始まりました。

「水がなんか濁ってきたんやけど」「クラゲが壊れて沈んでるよ」
この十数年間、柳生さんから電話で呼んでもらって行かせていただいて、想芸館のクラゲ製法とメンテナンス技術を育ててもらったという思いがあります。クラゲも様々な色や模様の試作品を置いていただきましたが、いろいろと試してみて、凡豆さんでは、お客さんに「もしかしたら生きているクラゲなのかな?」と思ってもらえるような白いシンプルなクラゲに落ち着きました。

自分の息子が「予科練」に入る年になり、今年は家族で「永遠のゼロ」を見に行きました。柳生さんの張りのある声で、クラゲの評判や珈琲、飛行機の話など、いろんな話を聞くのが楽しみです。

すっと背筋を伸ばして店先に立つ柳生さんの姿を見るたび、「柳生さん以上に自分も90歳を超えても頑張ってクラゲ屋を続けるぞ」と目標にしています。

interviewer:satori design

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